特筆すべきセッションの内容だけ抜粋します。
【The Mad Scientists Of Paid Search】
Speakers:
Lars Hirsch, Group Program Manager, Microsoft (@larshirsch)
Bryan Minor, Chief Scientist, Acquisio (@BryanMinorPhD)
Jared Schroder, VP Data Intelligence & Marketing Technology, Location3 Media
毎年同じタイトルでやっている人気セッションです。各社の「Paid Search分野の狂ったサイエンティスト」たちがその成果を披露します。個人的にも好きなセッションです。
さすが人気セッション。満席でした。
<Microsoft>
要約:業種別、時間帯別、デバイス別でパフォーマンスは異なる。このあたりを分析した上での予算配分と入札設定を実施。クロスチャネルアトリビューションは必須。アトリビューション関連データを提供すべく試験中。ゴールベースの最適化機能は提供予定。
- Bing/AdCenter上での各種データを提示。
- 一日の終わり、月の終わりにさしかかるにつれ競合が脱落するのでCPC、CPAは落ちる。よって予算を一日の終わり、月の終わりにシフトする。まあ、これはold school SEMですね
- リテール業種
- PCのCTRは昼にスパイク。タブレットは夜間
- 朝のタブレット経由のクリックは過小評価されている
- 金融業種
- 一日を通じて質の高いタブレット経由のクリック
- 旅行業種
- 昼と夜に質の高いモバイル経由のクリック
- 業種別で一日の各時間帯で、一番ROIがよいデバイスタイプの話。興味深い(P12)
- クロス・デバイス・アトリビューションを実施しないとキャンペーンを過小評価している可能性がある
- 試験的に取り組んでいるアトリビューションモデル:Keyword Assist
- クリックだけでなく、クエリーを見るモデル
- 手法
- コンバートしたキーワードからクエリーを特定
- コンバージョンパスに現れる相対的確率を計算
- 関連性を計算
- ユーザーダイバーシティを計算
- コンバートしたキーワードと直前クエリーの組み合わせパターンを頻出度を計算
- 「アトリビューション・モデルを制するものは予算を制す」。名言かな。
- Pathfinderという、ゴールベースの最適化機能を18ヶ月内にAdCenterに実装予定の模様です。膨大な並列クラスター処理で、考えうるキャンペーンの変化をシミュレートするようです。広告主にはゴール達成のための最適なアクションを提示してくれるようです。
感想:Bing/AdCenterだけの世界の話ではないので参考になりました。弊社もレポーティングシステムをやっているのでわかりますが、時間帯別はもっとやらないとですね(ただ、データフィールドが爆発的に増えたので容量管理と処理スピードが課題・・)。
<Acquisio>
このプレゼンが一番すごいと思いました。総合ツールベンダーのAcquisioの方による入札戦略に関する話でした。
要約:なるべく細かくfine-tuneすることで固定予算をきちんと使い切り、最大の効果を得ることは可能
- キャンペーン予算が固定化されているケースは多いと思うが、1日・1ヶ月の予算が枯渇させず最大の効果を得るには?
- Googleはアルゴリズムを一日に2度変更するペースで、動く標的を追うようなもの
- インプットに対する小さな変更がアウトプットに対する大きな変化を生む
- 5年間研究した結果、継続的な入札調整(毎30分間(1時間2回))をすることで優れた結果を生むことがわかった
- 軍の巡航ミサイルをなぞらえたcruise missile approachと呼んでいる。動く標的を細かい微調整しながら追尾するのに似ているから。
- より多くのクリック(コンバージョン)をより少ないCPCで実現
感想:考慮しないといけない変数が多い中、変化に応じて細かく追尾していくのは確かに理にかなっている思いました。紹介された事例でも精度は高い様子でしたし、サーチ以外(GDN、DSP、他)でも基本的には使える手法であるため、Acquisioとしては最適化の中心に据えるんだろうなと思いました。
要約:クエリーデータをマイニングし、精度の高いキーワード戦略を実現
- Googleのクエリーの70%はどの広告キャンペーンともマッチングしないと言われている
- 完全一致は部分一致、フレーズ一致の3.12倍もコンバートする率が高い
- クエリーデータから頻出ワードをマイニングし、写真のようにタグクラウド化。クエリーテーマ分析(Query theme analysis)
- タグクラウドの文字サイズはコストの大きさ、カラーは費用対効果
- 重要クエリー、損失の大きいクエリー、品質スコアキラーをこの中からマイニング
- キーワードのカニバリゼーションを起こさないよう注意
- リスティング広告とオーガニックでの重複もマイニングできることになるが、両社は共存すべきで、相応に扱われるべき、というスタンス
【PLA To Pay: Maximizing Profits With Product Listing Ads】
Speakers:
Elizabeth Marsten, Vice President of Search Marketing, Portent, Inc.
Jay Stampfl, Client Services Manager, 3Q Digital
Frank Kochenash, VP Client Services, Mercent
<Portent>
- Bing Ads PLAがロンチ
- 構造は概ねGoogleと同じ
- 彼らの事例では、Bing Ads PLAはGoogle PLAの獲得数の 3-4%だが、獲得コスト面ではまだ高騰していないのでオススメ
- 良い点の一つはGoogleと違って管理画面の中にある点
- 審査に時間がかかる、審査がまだこなれていない
- エディターと互換性問題が残る
- Tipsとしては開始したばかりまだ複雑な構造にしないこと
- Bing UTMトラッキングがようやく実装予定
- SuperMetricsというGoogle Analytics plug-inを使うとトラッキングできる
<Mercent>
要約:米国の(PLA実施)広告主予算の平均35%はGoogle PLAに費やされているらしい。それだけ重要性が増しているGoogleの近未来の姿を予想
このセッションが一番ためになった気がします。もちろんMercentのKochenash氏の個人的な予想ではあります。ちなみにMercentは米国のデータフィードサービス提供会社。エンタープライズ級クライアントがほとんどのようですが、何年も前からデータフィードを手がけていることもあり、その視点は興味深かったです。
- PLAに反映されるデータは増える〜Structured Dataの準備をしておくことが有利に。差別化要因は入札ではなくフィードにある。フィードを最適化
- 購入可能なバリエーションが重要に。バリエーションのデータをより多くフィードに送信する。最近アップデートされたContent APIを活用する
- ユーザが価格比較をしやすい新しい機能が実装される。価格競合性の測定を。価格を意識した入札戦略をテストし始めておく
- Googleによるフルフィルメントサービスの充実化。別の言い方をするとGoogleのフルフィルメントサービスを活かすためのデータ認定の実装。常にフルフィルメントやカスタマーサービスを充実させる
- AdWords内で価格競合性に関する指標の実装
- PLA内での検索広告用リマーケティングリスト(RLSA)の実装
- ブランド企業のための新しい広告商品の実装。共同マーケティングやMDF(市場開発基金)的なプログラムを活かすようなもの
- モバイルでのショッピング体験はより充実したものに。ローカル店舗の在庫・価格情報を提供できるようにしておくこと
サマリーとしては:
- Google PLAはより「eコマース風」になっていくと予想
- データの準備を怠らない
- 組織についてもそういった変化に対応できるよう準備していく
- サプライチェーンパートナーシップを強化しておく
感想:PLAはすでに最重要施策の一つであり、そのプレゼンスはさらに高まる見込みです。どの程度予測が当たるかはもちろんわからないですが、データも組織も柔軟性を持たせておくことがやはりとても大事だと思いました。Amazonとかなり競合する感じですね。日本ではフルフィルメントサービスはどうするんでしょうね。
<3Q Digital>
要約:PLA内でのアカウント構成、除外キーワードの考え方、ショッピングキャンペーンへの対応について。
- PLAは2013年に競合が増え、オークションも活性化。結果、スケールも増し、CPCも増加
- 特にホリデーシーズンの売上増は特筆すべき点
- キーワードのマッピングは課題。除外キーワードはそもそもサーチとは違うビヘイビア。マッチタイプの制御は困難
- ユニークなクエリーが減るにつれ、コンバージョン率が高まる
- コンバージョン率を見てトッププロダクトを選定。ただし、入札によるので注意
- ショッピングキャンペーンについて
- キャンペーン優先度を付けることができるようになり、クエリーマッピングがよりしやすくなる
- インプレッションシェアと競合性指標の導入。インプレションシェアの増加が高いCTRにつながる
- ダブルサービングが実質できてしまう件。根本的に違う性質のオークション
- 詳しくは下記のAdmarketech.の記事で解説されていますので参照願います
AdWordsのショッピングキャンペーンを考える
http://www.admarketech.com/2014/02/adwords-shopping-campaigns.html
以下、SEO関連。ただ、私自身はSEOの専門ではないので、解説などは控え、要約記事へのリンク掲載と個人的な感想に徹することにします
【Super Session: Enhancing Search Results With Structured Data & Markup】
Speakers:
Jay Myers, Emerging Digital Platforms Product Manager – Product Recomendations, BestBuy.com
Jeff Preston, Senior Manager, SEO, Disney Interactive
Marshall Simmonds, Founder and CEO, Define Media Group, Inc.
SEOセッションで毎年楽しみなのがこれ。3年前から定番になっていてschema.org、Structured Dataの参考になります。
Up Close @ SMX: Enhancing Results With Structured Data & Markup
http://searchengineland.com/super-session-enhancing-search-results-structured-data-markup-193869
Bruce Clay社のブログから。
SMX Liveblog: Enhancing Search Results with Structured Data & Markup
http://www.bruceclay.com/blog/smx-liveblog-enhancing-search-results-with-structured-data-markup/
詳細の解説は今回のSMXでご一緒させていただいた鈴木謙一さん(ご一緒できて楽しかったです!)にお願いしますw 無茶ぶりすみません。
感想としては、やはり2008から地道にStructured Dataの導入に取り組んで結果を出しているBest Buy、組織的にかなり細かいテストや導入をして実績を積んでいるDisney Interactiveの話は非常に面白かったですし、Structured Dataの重要性とその可能性を信じてきてよかったと思える内容でした。
実装しても当然リッチスニペットの表示が保証されるわけではないし、ビジネスへの直接的な貢献度は測りづらい面があります。組織としてどう予算化したり、取り組むかは今後も課題かもしれません。Best Buy、Disneyの方々は両者とも"leap of faith"(結果を考えずにやってみるしかない)と言ってました。それが許容される組織とそうでない組織はあると思います。ただ、よい結果がついてくることを信じて取り組む熱意が一番のドライバーなのかと思いました。
毎回SMXでは全体としての大きなテーマを自分なりにキャッチするようにしています。ここ数年は大きなテーマ(2007あたりからはアトリビューション、ソーシャル、DSPと続きましたが)が見当たりませんでした。ただ、今年は個人的にはStructured Dataだと思いました。理由は、3年前と比較してもStructured Data導入の重要性はかなり浸透してきたこと、そして、OrganicだけでなくPLAなどPaidの取り組みでもStructured Dataに対応できるデータ環境を整備することがますます重要になっていること、そしてGoogle、Microsoftが力を入れて取り組んでいる音声検索の分野でも、Structured Dataが重要であること(Microsoftの人は少なくともそう明言してました)が挙げられます。
Structured Dataは手段でしかないと思います。結局、本質的には消費者にどんな情報をコミュニケートしたいのかに行き着く話であり、それを構成するデータの器となる商品データベースやCRMのデータ設計、データ出力、データ/システム連携の柔軟性を保っておくことが、変化、進化が多いビジネス環境の中で、企業のマーケティング活動にとって今後ますます大事なのだと思います。そのあたりは日本でももっと語られてもいい分野なのだと思います。
【You and A with Matt Cutts】
もはや業界イベントの名物となったSMX/SearchEngineLand創設者Danny SullivanとGoogleのMatt Cuttsのセッション。
相変わらず軽妙な掛け合い。Dannyが絶妙なレベルで突っ込み、Mattが絶妙なテクニックで笑顔で交わすという(笑)
これを執筆している現時点で、ロンチ予告のあったPayday Loanアルゴリズムはロンチしてますね。
Matt Cutts: New Payday Loan Algorithm Update Coming, More News From SMX Advanced 2014 Keynote
http://searchengineland.com/matt-cutts-smx-advanced-2014-193814