ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦 「4+1の力」で価値を生み出す知と実践
大元隆志 著
献本いただいたこともあり読んでみました。
4+1は「モバイル」、「クラウド」、「ソーシャル(SNS)」、「ビックデータ」の4つの力と、5つ目の「モノのインターネット」(IoT - Internet of Things)を加えたもの。これらがどう企業環境に関わり、変えていくのか。それに対応するためのヒントも含まれています。
ビッグデータやIoTの話はとかくそれらが何で何ができるのかにフォーカスしがちですが(ビッグデータは定義さえ間違っていることも多い)、本書の目的にあるように、「個々の技術要素にとらわれず、ビジネスに活かし、新たな価値を創造する」という点は全体に網羅されているように思います。ところどころのインサイトはきちんと本質をついていて読みながら考えさせられることが多かったです。
事例も適度に深掘りしてて表層的なものではないのがよいです。組織やプロセスの話は当然含まれるべきで、これもカバーされていたし、それぞれわかりやすくまとめられていたと思います。
最後の2030年予想は正直アテにはなりませんが、本書の流れとしては当然入るべきで、本当に予想するというよりも、いつかわからない近未来起こりうることから自社・自身に照らし合わせて考えるためのエクササイズに使えるツールだと思います。
ということで全体としてバランスがとてもよく、本自体はとてもオススメです。マーケティングとIT融合の本質を掴むためのヒントを得たいマーケティング従事者は読んでみるべきだと思います。
読みながら、終始、本書にも出てくるいくつか米国の代表的な企業のことが頭を離れませんでした。特に1社は個人的にも非常にリスペクトする企業ですが、思えば10年以上前からこれらにつながる取り組みはしてるんですよね。それを思うと、日本企業の見事な遅れ具合に焦りを通り越した、軽い絶望感を感じ得ずにいません。今も圧倒的なスピード感があります。というか、今のこのスピード競争を爆走できる体制を固めてきたのかもと言ってもいいかもしれません。
その企業はこの10年、早めに取りかかることで色々な試行錯誤をしてきたわけです。ベーシックな土台となるインフラストラクチャー(システム面、組織面、プロセス面)はある程度確立しています。土台があるからこの先の変化にもどんどん対応しやすい。その反面、日本はまだそのスタートラインに立ったばかりの企業も多い現状です。それを阻む企業カルチャーなど課題も多いです。しかも、まずは土台を整える必要がある中で、様々な環境の変化に迅速に、かつ柔軟に対応しないといけないわけです。これはとても難しいことだと思うのです。
とネガティブなことばかりを言ってても仕方がないのですが、課題が多過ぎて、正直どこから手をつけるべきなのか、僕自身答えなどありません。一つ言えるのは、「変化を理解しチャレンジする企業と、できない企業のビジネスの差がより大きく出る時代」であることは本書を読んで確信めいたものに変わりつつあります。
Good reading!
ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦 「4+1の力」で価値を生み出す知と実践
大元隆志 著