ということでQuantum Leap再開です。いきなりヘビーな話題も何なのでライトに(内容はライトだけど、書き始めたら長くなってしまいました)。
サーチ系カンファレンスの話です。ご存知の方も多いですが、SESとSMXになります。私は毎年どちらも参加してコラムなども書いたりしている関係で、どれを選んだらよいか?どんな内容なのか?役立つのか?英語はどの程度必要なのか?など色々お問い合わせをいただくことが多いので、ここでまとめておきます。
SESとは?
SESのほうが歴史が長いです。SES (Search Engine Strategies)は検索エンジン業界のカリスマ編集者Danny Sullivan氏(現SMX/Third Door Media Editor-in-Chief)が1999年に創設した世界的なカンファレンスシリーズ。現在はIncisive Mediaが運営。他にはSearch Engine Strategies, ClickZなどのメディア事業、教育事業など。
http://sesconference.com/
SMXとは?
SMX (Search Marketing eXpo)はDanny Sullivan氏が2006年に創設した世界的なカンファレンスシリーズ。Third Door Mediaが運営母体で他には Search Engine Land、Marketing Landなどのメディア事業など。
http://searchmarketingexpo.com/
そうなんです。両方ともDanny Sullivanが創設した団体なんです。それもおもしろいですよね。彼の業界への貢献度は高いなんてものではありません。でも、お話しするととてもフランクな方で、本当に純粋に検索エンジンビジネスが好きなんですよね、恐らく。
どんな内容なのか?
1. 著名人/インフルエンサーによるキーノート
今までは大手ブランド広告主のCMO、GoogleのAnalyticsのエキスパート/エバンジェリスト Avinash Kaushik、 「グランズウェル」の著者シャーリーン・リー、Bingの事業責任者などがキーノートを務めました。その年のテーマを形成することが当然多かったので、カンファレンスを選ぶ際はキーノートスピーカーとその内容をチェックしましょう。
2. セッション
リスティング広告、SEO、アクセス解析、アトリビューション、ディスプレイ広告、ソーシャルなどのトラックに分けて2-3日間に渡って開催されます。1セッション約1時間。モデレーターが進行役を務め、最後の15-20分は質疑応答時間ですが、スピーカーと質問者との間で交わされるやり取りがセッション内容よりも濃いことも多々あります。
3. トレーニング/ワークショップ
所詮通常セッションは1時間程度ですので、さほど深い内容は聞けないことがあります。それをカバーするのがハンズオンの有料トレーニング。
4. 展示エリア
各種SEMツールベンダー、エージェンシー、リサーチ会社など50−100社がソリューション/サービスを展示。積極的にソリューションパートナーの発掘を目的に展示エリアを何周もする日本からの参加者もいつも見受けられます。これもセッションでは聞けなかったことを深掘りして聞ける場となっています。
5. ネットワーキングイベント
ランチ、パーティー、スポンサーイベントなど
参加者は?
学習意欲の高いサーチ業界/周辺業界のエキスパートたちが世界中から集まり情報発信、情報共有する場となっています。広告主、広告代理店、媒体社、ツールベンダーの方々が参加しますが、広告主の参加が非常に多く、本気で何かすぐに実践できる学びをを持ち帰ろうという意気込みを毎回感じます。また、吸収するだけではなく、自分の経験やノウハウを惜しみなく発信する姿勢も積極的です。
サーチ(自然検索、リスティング広告)のみならず、アナリティクス、アトリビューション、DSP/RTBを中心とした入札型ディスプレイ広告、ソーシャルまわりを取り上げることが多くなりました。一時期はサーチに特化したカンファレンスというよりかはソーシャルメディア系のカンファレンスじゃないか?と思うほどでした。最近はだいぶ整理されてきた感があり、あくまでもサーチを中心として、その周辺施策や連携方法としての取り組みとしてソーシャルなどが取り上げられるようになっています。
それぞれに違いはあるのか?
SESとSMXはカンファレンスの構成も似てますし、セッション内容もスピーカーも同じだったりすることがあり、内容にあまり大きな差はありません。
SESは最も規模が大きいのは9月にサンフランシスコで開催されるSES San Franciscoです。昔はGoogle, Yahoo!, MSN, Askなど大手検索エンジンは、このイベントに合わせて(当時はサンノゼで開催)大きな機能の発表をぶつけてきたものです。あと、この時期、Googleキャンパスで開催されるパーティーGoogle Dance(昔の検索結果で発生する現象の名前ではなく、本当にダンスパーティー)が開催され、参加者の楽しみの一つでもありました。今は検索エンジン業界の成熟と共に、少し落ち着いてしまいましたが。
3月のニューヨークは米国のエージェンシーが多いせいか、エージェンシーセントリックな話題が多いとされていますが規模はサンフランシスコよりは小さいです。アジア(上海と香港)で開催しているのはSESだけですね。
SMXは3月にサンノゼで開催予定のSMX Westが規模としては最も大きいとされています。SMXでは上級者向けのAdvancedが6月にシアトルで開催されます。規模はさほど大きくないですが、やはりサーチ上級者を自負する強者が集まるので、内容もさることながら参加者間のやり取りにとても意義を感じるイベントかと思います。
実は以前1年だけシアトルで旅行業に特化したSMXが開催されました。参加した感想としては内容はさすがにフォーカスされていてよかったのですが、参加者を集められず、あまりビジネスにならないと主催側が判断したのでしょうか。あの後は業種特化型は開催されていません。
何を目的に行くべきか?
参加する目的はもちろん人それぞれでしょう。最新のテクニック、テクノロジー/ツール、業界トレンド/方向性などの情報を求めるのは当然でしょう。運用手法などは日本のほうが緻密だし、参加する必要は感じないという人の声をよく聞きます。そうかもしれません。でも、データ分析などは異常なほど深く行っている場合がありますし、そういったものや、そこから導きだされる考察などは大変勉強になります。海外の広告主、媒体社、エージェンシー、ツールベンダーと直接コミュニケーションできるメリットもあります。勉強にもなりますし、商談につながることも今まで非常に多かったです。色々なことが聞けます。発見も多いです。私自身もう6-7年は連続して参加してますが、必ず持ち帰るもの、日本で伝えたいと思うことがあります(でないとお金と時間を使ってアメリカまで行きませんw)。
あと、やはり業界全体としては米国を中心に海外のほうが進んでいる分野が多いのも事実でもあるので、そういった「流れ」をいち早くつかむことが一番大きいメリットだと個人的には感じています。昔はLPO、最近ではアトリビューションのようなものはこういうカンファレンス参加から、いずれ日本にもくるな!と感じたものです。
英語は?その他カンファレンス参加の心得
まあ、英語はある程度聞き取る力があれば何とかなりますw 数日のうちに耳も慣れてきます。正直気合いですw
その他カンファレンス参加における心得のようなものをまとめてみます。
・一日中セッションに参加するので時差もあってずっと眠いです。時差調整を含め、1日余裕をもって現地入りするのがよいと思います。
・セッションは複数トラックに分かれるので、一緒に参加している人と分担しましょう。こういうときは日本人同志でつるむのも悪くありません。事前に参加セッションを申し合わせしておき、ディナー時に集まって情報交換することで、自分が聞いていなかったことだけでなく、同じセッションに出ていた人同志で情報を補い合うことで英語力をカバーできます。これはおススメの方法です。意外と日本では会えない人同士で知り合いになれるので、現地でのディナー会は楽しく盛り上がります(私の楽しみの一つでもあります。ですので、なるべく出発前に参加する人をキャッチして現地ディナーなどをセットします)。
・セッションの終わりの質疑応答タイムに思い切って質問してみましょう。英語で自信がつきます。それができなくてもセッション後にスピーカーに話しかけてみましょう。名刺交換もできますし、例えば追加の詳細資料が欲しい!といったら直接送ってくれたりします。
・ネットワーキングランチやドリンク、ディナーイベントでは海外の人と積極的に話してみましょう。同じ業界ですから意外と通じますし、お互い何か得るものがあるはずです。
・パートナー探しをしたい人はチャンスは転がっています。期間中にミーティングしましょう!と申し出てみましょう。1枚でいいので英語版の会社概要があると会話もスムーズに進行します(これはどんな場面でも使えるテクニックです。うちの自己紹介!って紙を渡せばたどたどしい英語で話す必要もなく、向こうが勝手に質問してくれます!)。
参加費、渡航費など費用
SES、SMX共に全セッション、展示エリア、ネットワーキングイベントの参加込みで1500-2000米ドルです。あとはフライト、ホテル(SES SFの例ですと、時差調整日を含めたとすると4-5泊ほど)、交通費、食費(期間中軽い朝食とランチはカンファレンスで出ます)。
ご参考(今までのSES/SMX参加報告のコラム)
【2012年】
SES San Francisco 2012報告
http://www.quantumleap.jp/2012/09/ses-san-francisco-2012.html
グーグルの検索結果に「著者」として自分の名前と写真を出すGoogle Authorship Markupの設定方法
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2012/09/06/13440
【2011年】
オンラインマーケティングは新段階「ホリスティック」へ--SES San Francisco 2011レポート
http://japan.cnet.com/news/commentary/35007023/
Facebook広告には「第2の品質スコア」がある! 検索連動型広告との違いや特性を分析
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2011/07/05/10591
【2010年】
アドワーズ広告の「拡張CPC」は、グーグル公式の慎重で柔軟な自動入札の仕組みだ
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2010/11/24/9255
サーチとディスプレイ広告の新たな関係から見える課題--「SES San Francisco 2010」レポート
http://japan.cnet.com/news/commentary/20419585/
上司にアドワーズの予算アップを認めさせる数字作り - エクセルでできる自動入札ツール同様の予算最適化
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2010/07/02/8287
ソーシャルメディアと連携する検索エンジンマーケティングの3つの視点「SMX Advanced Seattle 2010」報告
http://business.nikkeibp.co.jp/article/nmg/20100621/215073/?ST=nmg_page
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参考になりましたでしょうか?ここまで書いておいて何ですが、私自身は今年は他のカンファレンスに参加するかもしれませんが、弊社の他のメンバーは参加すると思います。ご興味が少しでもある方は絶対に参加することをおススメします。ぜひご一緒いただければ幸いです!