2013年11月20日水曜日

SES(Search Engine Strategies)カンファレンスがClickZ Liveに変更。その変遷。

ClickZ Live

SES(Search Engine Strategies)カンファレンスシリーズがClickZ Liveに変わるそうです。
http://sesconference.com/

SES (Search Engine Strategies)は検索エンジン業界のカリスマ編集者Danny Sullivan氏(現SMX/Third Door Media Editor-in-Chief)が1999年に創設した世界的なカンファレンスシリーズでした。現在はIncisive Mediaが運営しています。他にはSearch Engine Strategies, ClickZなどのメディア事業、教育事業などを運営しています。

検索エンジンマーケティングに特化したイベントとしては世界最大級で、1年中、各地で開催されるシリーズでもあります。なかでも毎年夏に西海岸で開催されるイベントは特に規模が大きく、検索エンジン各社からの新しい発表も多いのが特徴でした(検索エンジン各社が8月のSES San Joseでの発表に合わせて新機能を実装、という流れも一時期あったほど)。

カンファレンスには世界中の検索エンジン従事者が集まり、積極的にノウハウ共有をします。ネットワーキングイベントも盛んで、SES San Joseが開催されていた頃は、カンファレンスが終わるとGoogle本社キャンパスで行われるネットワーキングイベント、通称"Google Dance"に参加するのが参加者の楽しみの一つでした。

私自身、個人的な興味も高く、2004年あたり頃から参加し始めここ7年ほどは毎年参加し、SEOやリスティング広告の最新動向について情報収集をしてきました。

サーチとディスプレイ広告の新たな関係から見える課題--「SES San Francisco 2010」レポート
http://japan.cnet.com/news/commentary/20419585/

オンラインマーケティングは新段階「ホリスティック」へ--SES San Francisco 2011レポート
http://japan.cnet.com/news/commentary/35007023/


SES San Francisco 2012レポート:検索エンジンマーケティングから見る求められる人材像 from Go Sugihara

これ以外の過去の参加レポートを見ても、転機は2007年で、この頃からソーシャル、ディスプレイ広告/DSPあたりがカンファレンスセッションの多くのコマを占有することになります。ホリスティックな世界になってきて、検索エンジンマーケティングだけでは明らかに足りなくなってきたのです。ただ、検索エンジンマーケティングに特化したブランドでやってきたSESとしては、2007年以降は全体テーマを模索するのに苦労していたのは参加した誰もが意識していたと思います。

なので、今回のClickZ Liveという、検索エンジンマーケティングだけではなくデジタルマーケティングを幅広く取り上げるカンファレンスシリーズに変更になったわけです。
"The Global Conference Series Designed by Digital Marketers, for Digital Marketers"(デジタルマーケターによる、デジタルマーケターのためのグローバルカンファレンスシリーズ)

数年後には「今年もSES行ってきました」なんて言ってもSESでさえ知らない人も出てくるんだなと思うと個人的には少し寂しいですが、業界的には至極自然な流れだと思います。もう一方の検索エンジンマーケティングに特化したカンファレンスシリーズであるSMX(Search Marketing eXpo)はどうするか注目したいと思います。

2013年11月6日水曜日

Search Summit Tokyo 2013から

先日、Search Summit Tokyo 2013を開催しました。事務局の一人として全体企画に携わり、冒頭挨拶だけ僭越ながらやらせていただきました。多数のご応募をいただきましたが運営側の力不足もあり、今年は抽選制にさせていただきましたが、参加者の皆様、応募いただきながらご参加いただけなかった皆様、ありがとうございました。パネリスト、スタッフの皆さんもお疲れさまでした。

全体としては大変好評をいただき、また来年につながったのではないかと思います。
いくつかブログやソーシャル上でもポジティブなコメントをいただきました。ありがとうございます。

http://www.baka-ke.com/2013/10/31/search-summit-tokyo-2013-report/
http://seomyself.wordpress.com/2013/11/05/search-summit-tokyo2013-seo/
http://mousoudao.blog.shinobi.jp/Entry/26/

その中で特に取り上げて本ブログでも記録として残しておきたい部分がありました。

[雑談]情報提供プラットフォームとしてのリスティング広告
http://sem-hacks.com/blog/2013/11/05/1231/

"「他者がつくったデータベースに情報を読み込ませる技術」という点で、SEOとリスティング広告は同様なものであると言えます。"

Search Summit Tokyoのパネルセッションの中で最も本質を突いたくだり&テーマだったと思っています。ここを取り上げていただき大変嬉しく思います。

Quantum Leap的にコメントをします。

SEOであればリスティング広告であれ検索エンジンをビジネスとして活用するために理解すべきいくつかのファンダメンタルな部分というものがあると以前から思う次第です。

曲がりなりにも通信・IT業界にいると、OSI7層モデルやら、クライアントサーバーアプリケーションの三層アーキテクチャーなどを活用することが多いのですが、検索エンジンとて、所詮はITアプリケーションなわけで、上記モデルやアーキテクチャーのように層(レイヤー)に分けて考えると意外ととスッと入ってくるように思います。

クライアントサーバー型のアプリケーションは:
1. プレゼンテーション層
2. ロジック層
3. データ層
の3つで構成されるわけですが、それぞれ、検索結果(リスティング広告含む)、検索エンジンのアルゴリズム、検索エンジンのデータベースと変換することができます。

運用者はロジック層を多分に理解しないと運用はうまくいかないわけです。つまりは検索エンジンのアルゴリズムと言われる部分です。ただ、通常ですと、ITアプリケーションは自分で設計して開発するので、アルゴリズムは自分が一番理解している(はず)なのですが、検索エンジンの場合は、上記の「他者がつくった」に通ずるところで、アルゴリズムは検索エンジンが握っているわけです。

検索エンジンのアルゴリズムは当然非公開ですのでいわゆるブラックボックス。ですのでそこを最大限理解するよう努力し、対策することが肝要です。この根幹の部分は変わることはないと思われるので、SEOだったりリスティング広告の運用者が担う役割は引き続き重要性が高いと考えます。

ただ、ここで多いのが、ロジック層「だけ」を一生懸命に理解しようとするケースです。とりあえず理解するだけならまだマシなほうで、故意に誤った認識をして不正を働く人が絶えないのもこの部分だけを何とかしてやろうとするからです。

プレゼンテーション層は何をどう表現するかになりますが、検索結果や広告表現をどうするかという部分以上に、そもそものビジネスオブジェクティブがあるはずで、そこをいかに理解し、間に入って変換できているかということが大事かと思います。そういう意味ではプレゼンテーション層のさらに上位レイヤーにビジネス層というものがあると想定すると分かりやすいかと思います。

データ層は関係ないと思いがちでしょうが、そんなことはありません。データベースに入るものは?その中で検索エンジンとしてもビジネスとしても意義のあるものは?を理解することが大事です。あと、その上で言語特性を理解する必要があります。日本語は世界でも最も難しい言語の一つです。簡単に言うと、日本語の文章は言葉に分割するのがとても難しいので、今の技術では限界があります。だから検索エンジンが理解しやすい日本語とは何かを把握することが必要です(常々言っているように、「言葉を制するもの、SEMを制する」と)。SEO従事者のほうがここは意識する場面が多いかもしれません。リスティング広告従事者も、そもそも理解すべきですが、昨今の商品リスト広告のような取り組みが浸透していく中で、データベースやデータフィードの構造や活用法は運用ノウハウの中にマストアイテムとして入れないといけなくなりました。

あと、上記レイヤー以外の部分なので見落としがちですが、そもそもの検索エンジンの本質は何か?検索エンジン側が存在する意義や彼らの思惑を理解することを忘れているケースも多いかと思います。今一度、検索エンジン側の立場や視点に立って検索エンジンとは何か、を理解することは自分自身がその中で何をどうすべきかを理解するのに役立ちます。

来年もSearch Summitは開催予定です。より分科した専門セッションを設けたいと思いますが、こういった俯瞰的、本質的な議論も活発にできればと思う次第です。

2013年9月16日月曜日

「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」を読んだ

ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦 「4+1の力」で価値を生み出す知と実践
大元隆志 著

献本いただいたこともあり読んでみました。

4+1は「モバイル」、「クラウド」、「ソーシャル(SNS)」、「ビックデータ」の4つの力と、5つ目の「モノのインターネット」(IoT - Internet of Things)を加えたもの。これらがどう企業環境に関わり、変えていくのか。それに対応するためのヒントも含まれています。

ビッグデータやIoTの話はとかくそれらが何で何ができるのかにフォーカスしがちですが(ビッグデータは定義さえ間違っていることも多い)、本書の目的にあるように、「個々の技術要素にとらわれず、ビジネスに活かし、新たな価値を創造する」という点は全体に網羅されているように思います。ところどころのインサイトはきちんと本質をついていて読みながら考えさせられることが多かったです。

事例も適度に深掘りしてて表層的なものではないのがよいです。組織やプロセスの話は当然含まれるべきで、これもカバーされていたし、それぞれわかりやすくまとめられていたと思います。

最後の2030年予想は正直アテにはなりませんが、本書の流れとしては当然入るべきで、本当に予想するというよりも、いつかわからない近未来起こりうることから自社・自身に照らし合わせて考えるためのエクササイズに使えるツールだと思います。

ということで全体としてバランスがとてもよく、本自体はとてもオススメです。マーケティングとIT融合の本質を掴むためのヒントを得たいマーケティング従事者は読んでみるべきだと思います。

読みながら、終始、本書にも出てくるいくつか米国の代表的な企業のことが頭を離れませんでした。特に1社は個人的にも非常にリスペクトする企業ですが、思えば10年以上前からこれらにつながる取り組みはしてるんですよね。それを思うと、日本企業の見事な遅れ具合に焦りを通り越した、軽い絶望感を感じ得ずにいません。今も圧倒的なスピード感があります。というか、今のこのスピード競争を爆走できる体制を固めてきたのかもと言ってもいいかもしれません。

その企業はこの10年、早めに取りかかることで色々な試行錯誤をしてきたわけです。ベーシックな土台となるインフラストラクチャー(システム面、組織面、プロセス面)はある程度確立しています。土台があるからこの先の変化にもどんどん対応しやすい。その反面、日本はまだそのスタートラインに立ったばかりの企業も多い現状です。それを阻む企業カルチャーなど課題も多いです。しかも、まずは土台を整える必要がある中で、様々な環境の変化に迅速に、かつ柔軟に対応しないといけないわけです。これはとても難しいことだと思うのです。

とネガティブなことばかりを言ってても仕方がないのですが、課題が多過ぎて、正直どこから手をつけるべきなのか、僕自身答えなどありません。一つ言えるのは、「変化を理解しチャレンジする企業と、できない企業のビジネスの差がより大きく出る時代」であることは本書を読んで確信めいたものに変わりつつあります。

Good reading!

ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦 「4+1の力」で価値を生み出す知と実践
大元隆志 著

2013年6月13日木曜日

gluはなぜgluなのか?

6月10日に弊社のマーケティングデータ統合管理プラットフォームgluのリリースを行いました。

マーケティングデータ統合管理プラットフォーム「glu(グル―)」の提供開始
http://www.atara.co.jp/pr/glu.html

gluはアタラがマーケティング/広告業界のクライアント様のニーズに合わせ、一件一件、受託開発で蓄積してきた技術、経験、ノウハウの集大成です。少しづつプラットフォーム(モジュール群)とENGINE(受託開発で使うAPIライブラリ)ができてきたので、自社プロダクトとして国内外で広く販売することにした次第です。

gluは各マーケティング/広告施策をAPIでつなぎ、データを統合します。

APIの有効利用は今後非常に大事だと考えています。理由は3つあります。

私が本格的にAPIに関わるようになったのは2002年の旧オーバーチュア在籍時でした。その前もIT企業にいた際はAPIは広く使われていたので概念は理解していました。リスティング広告を管理するためのいわゆる管理画面は、ユーザーが必要とする機能を最大公約数的に実装したものに過ぎません。これは常にそういうものです。それ以上の機能、や独自のニーズを満たすカスタム機能が必要な場合はAPIを使って外部システムから制御します。リスティング広告はその特性から管理が楽になること、簡素化することはまずないだろうと思っていたのでAPIを使った外部システムは合理的な解決策でした。実際、米国ではECや旅行業のトップ企業は10年前から積極的に自社でAPIを活用し、自動化を進めて成功してきました。

リスティング広告などは象徴的ですが、データの大容量化が一つ目の理由です。管理画面からデータをダウンロードして様々な加工をすることは非常に労力がかかります。APIで裏から自動的に取得すればその分の工数は減ります。

二つ目の理由は、データの複雑化です。例えば広告でユーザーをターゲティングするためのオプションが増えてきたため、レポートで取得できるデータも当然複雑化します。複雑化したデータから、タイムリーに意味のあるインサイトを導くためにはAPIで取得、集計、加工を自動化しないと追いつかなくなってきました。

最後にデータの多様性が挙げられます。ここ数年のデバイス x メディアの大爆発で、ユーザーは各所に拡散してしまったため、企業はさまざまな施策を駆使しないとリーチできない状況です。APIを使って各施策のデータを集約し、どんな施策が動いていて、それぞれがどういうパフォーマンスを発揮しているかを見える化した上で、迅速なアクションにつなげる必要があります。

最近これに沿った非常に面白い動きがあります。

今、起こりつつあるAPIエコノミーとか何か?(TechCrunchから)
http://jp.techcrunch.com/2013/04/29/20130428facebook-and-the-sudden-wake-up-about-the-api-economy/

広告/マーケティング業界にもまさしくAPIエコノミーがきていると思います。企業がユーザーとコミュニケートする場は今後も減ることはないでしょう。大変ですが、この状況に企業は対応する必要があります。

gluはAPIという接着剤を使って、これらの施策をペタペタと粗結合し、データを収集し見える化します。ゆくゆくは外部から制御もできるようにします。接着剤は英語ではglueですので、そこからgluという名前が生まれました。

この粗結合、つまり緩い相互連携の意味ですが、いかに今後、スピード感をもちつつ企業のニーズを満たす幅広い施策とデータに対応するかがキーポイントになるかと思います。

gluの今後の進化にご期待ください。

2013年6月12日水曜日

海外マーケティング系カンファレンスの歩き方

今年もシアトルで開催されている検索エンジン業界の2大カンファレンスの一つであるSMX(Search Marketing eXpo) Advancedにきています。

SMXが始まってから毎年参加しているので4-5年になるのではないかと思います。もう一方のSESもその前から参加しているのでカンファレンス参加歴は6-7年になります。

毎回参加すると、色んな学びがありますが、カンファレンス内容はもちろん、その内容をなるべく吸収するために必要なものも見えてきます。

カンファレンス参加を100%活かすためのいくつかの手法やツールを紹介したいと思います。

1) 時差調整してから臨む
カンファレンスは9時から18時までスケジュールがビッシリ。それを3-4日間参加するからかなりの労力を使います。途中眠くなることもしばし。日本から前日、または前々日に現地入りし、時差調整することで会期を乗り切れると思えば数日分の宿泊費など安いものです。といってもそれでも眠くはなるのでガムや飲み物なども準備しておきましょう。

2) 電源を確保する方法
カンファレンス会場では意外と電源の確保に困ることが多いのです。電源ソケットが横の壁だけ、前列だけ、端の席だけなど全席に用意されているわけではありません。
最近のPCは大容量バッテリーのものも多いですが、やはり電源が途中で切れてしまいメモを取れなくなるのは怖いです。筆者は必ず延長ケーブルを持参します。電源ソケットが遠くにあっても対応できます。また、周りの人にも延長ケーブルを使わせてあげましょう。それが会話のきっかけになることが実に多いです。

3) 会場は意外と寒いことが多い
カンファレンス会場はエアコンが効きすぎて寒くなることがあります。羽織るものなどを持参しましょう。

4) Twitterなどでカンファレンスの内容を読み取る
カンファレンス主催者が提示したTwitterハッシュタグを追えば、要約上手な人が講演内容を書き込んでくれるので、メモを取りのがしても理解できます。後でレポートを書くにも役立ちます。また、複数トラックあって両方に出られないケースでも、概要は理解できるので活用しましょう。

5) セッションの終わりの質問タイムを有効に使う
実際のセッションよりも、最後の質疑応答(Q&A)のほうが役立つケースも多いものです。パネリストと聴講者とのやり取りもなかなかおもしろいです。Q&Aは耳に頼るしかないため上級者向けですが、がんばって少しでも聞き取ってみましょう。

6) プレゼン資料を入手する
プレゼン資料はセッション後に公式ウェブサイトなどにアップしてくれるケースがあるので、どこにあるか、ログインのためのID/PWは何かを調べましょう(公式ガイドなどに書いてあることが多い)。ただ、スピーカーによってはなかなかアップされないケースもあります。プレゼンの最後などにメールアドレスを教えてくれることも多いので、書き留めて直接スピーカーに連絡して入手しましょう。

7) 展示会場でどんどん話す

展示会場が併設されている場合は、興味がありそうな各社のブースで色々聞いてみましょう。1対1のコミュニケーションから思いがけず入手できる情報があるかもしれません。予め質問を準備しておくのもいいかもしれません。

8) ネットワーキングする
海外の同業者の話を聞くのも有益です。機会はたくさんあります。隣に座った人に話しかけるもよし、ネットワーキングランチやカクテルパーティーなどに参加するもよし。これも現地の言葉で自己紹介を準備しておくといいです(外国語で話すのが苦手な人は紙で準備しておくのもいいです)。
日本から参加した人たちで情報交換するのも役立ちます。複数トラックの場合、分担を決めることもできますし、同じセッション参加者同士で内容のおさらいをすることもできます(みんな帰国後の報告レポートは悩みの種なので!)。

以上です。参考になりましたでしょうか?
Happy conferencing!

2013年4月13日土曜日

新進系ダッシュボードの記事から情報系システムについて考える


久しぶりのQuantum Leap投稿です。
最近はアウトプットの機会が多かったので、インプット量を増やさないといけない、と模索してました。

そんな中、たまたまFacebookのタイムラインで遭遇した記事が目を引きました。

オフィスのトレンドは「クールな情報ダッシュボード」
http://wired.jp/2013/04/12/big-boards/

僕はダッシュボードが大好きです。このシステムもオフィスにあったらいいだろうなと今日一日中考えてました。今の弊社のビジネスでも、ある意味独自のマーケティングダッシュボードを開発・販売し、一定の成果を上げています。

情報システムをものすごくざっくり大別すると「基幹系」と「情報系」に分かれると思っています。基幹系にも色々あります。基幹系システムは業務を遂行するために不可欠なもので、業務内容と直接に関わる販売、在庫管理、財務などが含まれます。もっと簡単に言うと、ないと「ビジネスが傾くほどのインパクトのあるもの」、とも言えるかもしれません。対して情報系システムは、コミュニケーションや事務処理の効率化や意思決定の支援などのために構築されるシステムのことを言います。メールやオフィスソフトウェア、グループウェア、データウェアハウスなどが含まれ、業務の中核に直接は関与しない、と定義されています(http://e-words.jp/より)。

10年以上前になりますが、グループウェア、EIPを開発する会社に所属していた時期がありました。とても先進的でよくできたシステムでしたが、営業は苦戦しました。競合企業がプロダクト設計とマーケティングが上手だったので差を拡げられたこともありましたが、窓口の担当者は気に入ってくれるのですが、「情報系システム」の導入を社内で決済を取るのが極めて難しい時代でした。基幹系は業務に不可欠なので、比較的決済は取りやすいものです。どこかには決まりますから。企業のニーズをうまく吸い上げていけば案件獲得の確度は上がります。ところが情報系は「なくてもなんとかなる」ということと「導入効果を数字(お金)で換算しづらい」ということで、案件自体がなくなることもありました。はがゆい思いを随分したものです。

あの経験は僕にとっては痛かったですが、大きかったです。でも、情報系システムの重要性についての考え方が揺らぐことは決してありませんでした。あの教訓から、「基幹系」と「情報系」のハイブリッドをいつか手がけてやると思ったのです。今、弊社が提供しているシステムはまさにそのハイブリッド型です。なければビジネス的には大きなインパクトが出るほどの情報系システムです。拡大していけばいくほど、基幹系の存在感を出すものかと思います。

上記の海外の「ビッグボード」も系統としては情報系システムで、当時の感覚で言うと「なくてもなんとかなる」「導入効果を示しづらい」ものかと思います。でも、2013年の今はどうでしょうか?個人的な感覚ですが、徐々にですが、情報系が基幹系に近づいていると思います。これだけの情報過多時代ですから。いかに自分を取り巻く情報を収集し、加工し、意思決定に活かすかが企業にとっても、所属する個人にとっても死活問題になっているわけです。ですから、今までの基幹系で扱われてきた販売、在庫、財務に加え、情報も重要性が増していると思うのです。

でも、昔と変わらずその導入効果を数字で表すのは難しいものには変わりません。ただ、情報システムのコストも導入リスクも下がってきたこともあるので、ないことよりも「あること」によるメリット(定性、定量)を考え、まずは導入してみることも大事だし、それが実際に可能になってきたかと思います。

2013年4月8日月曜日

データフィード最適化の基礎(MarkeZineより)

MarkeZineさんでデータフィード最適化の基礎についてコラムを掲載してもらいました。

話題のCriteo広告を出すために必要なデータフィードの概念と仕組みとは?【アドテクノロジー基礎講座第4回】
http://markezine.jp/article/detail/17425


2013年1月17日木曜日

サーチ系カンファレンスSESとSMX:興味のある方へ

新年明けて初めての投稿です。最近あまり執筆らしい執筆をしてませんでした。少々反省。

ということでQuantum Leap再開です。いきなりヘビーな話題も何なのでライトに(内容はライトだけど、書き始めたら長くなってしまいました)。

サーチ系カンファレンスの話です。ご存知の方も多いですが、SESとSMXになります。私は毎年どちらも参加してコラムなども書いたりしている関係で、どれを選んだらよいか?どんな内容なのか?役立つのか?英語はどの程度必要なのか?など色々お問い合わせをいただくことが多いので、ここでまとめておきます。

SESとは?
SESのほうが歴史が長いです。SES (Search Engine Strategies)は検索エンジン業界のカリスマ編集者Danny Sullivan氏(現SMX/Third Door Media Editor-in-Chief)が1999年に創設した世界的なカンファレンスシリーズ。現在はIncisive Mediaが運営。他にはSearch Engine Strategies, ClickZなどのメディア事業、教育事業など。
http://sesconference.com/

SMXとは?
SMX (Search Marketing eXpo)はDanny Sullivan氏が2006年に創設した世界的なカンファレンスシリーズ。Third Door Mediaが運営母体で他には Search Engine Land、Marketing Landなどのメディア事業など。
http://searchmarketingexpo.com/

そうなんです。両方ともDanny Sullivanが創設した団体なんです。それもおもしろいですよね。彼の業界への貢献度は高いなんてものではありません。でも、お話しするととてもフランクな方で、本当に純粋に検索エンジンビジネスが好きなんですよね、恐らく。

どんな内容なのか?

1. 著名人/インフルエンサーによるキーノート
今までは大手ブランド広告主のCMO、GoogleのAnalyticsのエキスパート/エバンジェリスト Avinash Kaushik、 「グランズウェル」の著者シャーリーン・リー、Bingの事業責任者などがキーノートを務めました。その年のテーマを形成することが当然多かったので、カンファレンスを選ぶ際はキーノートスピーカーとその内容をチェックしましょう。

2. セッション
リスティング広告、SEO、アクセス解析、アトリビューション、ディスプレイ広告、ソーシャルなどのトラックに分けて2-3日間に渡って開催されます。1セッション約1時間。モデレーターが進行役を務め、最後の15-20分は質疑応答時間ですが、スピーカーと質問者との間で交わされるやり取りがセッション内容よりも濃いことも多々あります。

3. トレーニング/ワークショップ
所詮通常セッションは1時間程度ですので、さほど深い内容は聞けないことがあります。それをカバーするのがハンズオンの有料トレーニング。

4. 展示エリア
各種SEMツールベンダー、エージェンシー、リサーチ会社など50−100社がソリューション/サービスを展示。積極的にソリューションパートナーの発掘を目的に展示エリアを何周もする日本からの参加者もいつも見受けられます。これもセッションでは聞けなかったことを深掘りして聞ける場となっています。

5. ネットワーキングイベント
ランチ、パーティー、スポンサーイベントなど

参加者は?
学習意欲の高いサーチ業界/周辺業界のエキスパートたちが世界中から集まり情報発信、情報共有する場となっています。広告主、広告代理店、媒体社、ツールベンダーの方々が参加しますが、広告主の参加が非常に多く、本気で何かすぐに実践できる学びをを持ち帰ろうという意気込みを毎回感じます。また、吸収するだけではなく、自分の経験やノウハウを惜しみなく発信する姿勢も積極的です。

最近の傾向は?
サーチ(自然検索、リスティング広告)のみならず、アナリティクス、アトリビューション、DSP/RTBを中心とした入札型ディスプレイ広告、ソーシャルまわりを取り上げることが多くなりました。一時期はサーチに特化したカンファレンスというよりかはソーシャルメディア系のカンファレンスじゃないか?と思うほどでした。最近はだいぶ整理されてきた感があり、あくまでもサーチを中心として、その周辺施策や連携方法としての取り組みとしてソーシャルなどが取り上げられるようになっています。

それぞれに違いはあるのか?
SESとSMXはカンファレンスの構成も似てますし、セッション内容もスピーカーも同じだったりすることがあり、内容にあまり大きな差はありません。
SESは最も規模が大きいのは9月にサンフランシスコで開催されるSES San Franciscoです。昔はGoogle, Yahoo!, MSN, Askなど大手検索エンジンは、このイベントに合わせて(当時はサンノゼで開催)大きな機能の発表をぶつけてきたものです。あと、この時期、Googleキャンパスで開催されるパーティーGoogle Dance(昔の検索結果で発生する現象の名前ではなく、本当にダンスパーティー)が開催され、参加者の楽しみの一つでもありました。今は検索エンジン業界の成熟と共に、少し落ち着いてしまいましたが。
3月のニューヨークは米国のエージェンシーが多いせいか、エージェンシーセントリックな話題が多いとされていますが規模はサンフランシスコよりは小さいです。アジア(上海と香港)で開催しているのはSESだけですね。
SMXは3月にサンノゼで開催予定のSMX Westが規模としては最も大きいとされています。SMXでは上級者向けのAdvancedが6月にシアトルで開催されます。規模はさほど大きくないですが、やはりサーチ上級者を自負する強者が集まるので、内容もさることながら参加者間のやり取りにとても意義を感じるイベントかと思います。
実は以前1年だけシアトルで旅行業に特化したSMXが開催されました。参加した感想としては内容はさすがにフォーカスされていてよかったのですが、参加者を集められず、あまりビジネスにならないと主催側が判断したのでしょうか。あの後は業種特化型は開催されていません。

何を目的に行くべきか?
参加する目的はもちろん人それぞれでしょう。最新のテクニック、テクノロジー/ツール、業界トレンド/方向性などの情報を求めるのは当然でしょう。運用手法などは日本のほうが緻密だし、参加する必要は感じないという人の声をよく聞きます。そうかもしれません。でも、データ分析などは異常なほど深く行っている場合がありますし、そういったものや、そこから導きだされる考察などは大変勉強になります。海外の広告主、媒体社、エージェンシー、ツールベンダーと直接コミュニケーションできるメリットもあります。勉強にもなりますし、商談につながることも今まで非常に多かったです。色々なことが聞けます。発見も多いです。私自身もう6-7年は連続して参加してますが、必ず持ち帰るもの、日本で伝えたいと思うことがあります(でないとお金と時間を使ってアメリカまで行きませんw)。
あと、やはり業界全体としては米国を中心に海外のほうが進んでいる分野が多いのも事実でもあるので、そういった「流れ」をいち早くつかむことが一番大きいメリットだと個人的には感じています。昔はLPO、最近ではアトリビューションのようなものはこういうカンファレンス参加から、いずれ日本にもくるな!と感じたものです。

英語は?その他カンファレンス参加の心得
まあ、英語はある程度聞き取る力があれば何とかなりますw 数日のうちに耳も慣れてきます。正直気合いですw
その他カンファレンス参加における心得のようなものをまとめてみます。

・一日中セッションに参加するので時差もあってずっと眠いです。時差調整を含め、1日余裕をもって現地入りするのがよいと思います。

・セッションは複数トラックに分かれるので、一緒に参加している人と分担しましょう。こういうときは日本人同志でつるむのも悪くありません。事前に参加セッションを申し合わせしておき、ディナー時に集まって情報交換することで、自分が聞いていなかったことだけでなく、同じセッションに出ていた人同志で情報を補い合うことで英語力をカバーできます。これはおススメの方法です。意外と日本では会えない人同士で知り合いになれるので、現地でのディナー会は楽しく盛り上がります(私の楽しみの一つでもあります。ですので、なるべく出発前に参加する人をキャッチして現地ディナーなどをセットします)。

・セッションの終わりの質疑応答タイムに思い切って質問してみましょう。英語で自信がつきます。それができなくてもセッション後にスピーカーに話しかけてみましょう。名刺交換もできますし、例えば追加の詳細資料が欲しい!といったら直接送ってくれたりします。

・ネットワーキングランチやドリンク、ディナーイベントでは海外の人と積極的に話してみましょう。同じ業界ですから意外と通じますし、お互い何か得るものがあるはずです。

・パートナー探しをしたい人はチャンスは転がっています。期間中にミーティングしましょう!と申し出てみましょう。1枚でいいので英語版の会社概要があると会話もスムーズに進行します(これはどんな場面でも使えるテクニックです。うちの自己紹介!って紙を渡せばたどたどしい英語で話す必要もなく、向こうが勝手に質問してくれます!)。

参加費、渡航費など費用
SES、SMX共に全セッション、展示エリア、ネットワーキングイベントの参加込みで1500-2000米ドルです。あとはフライト、ホテル(SES SFの例ですと、時差調整日を含めたとすると4-5泊ほど)、交通費、食費(期間中軽い朝食とランチはカンファレンスで出ます)。

ご参考(今までのSES/SMX参加報告のコラム)
【2012年】
SES San Francisco 2012報告
http://www.quantumleap.jp/2012/09/ses-san-francisco-2012.html

グーグルの検索結果に「著者」として自分の名前と写真を出すGoogle Authorship Markupの設定方法
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2012/09/06/13440

【2011年】
オンラインマーケティングは新段階「ホリスティック」へ--SES San Francisco 2011レポート
http://japan.cnet.com/news/commentary/35007023/

Facebook広告には「第2の品質スコア」がある! 検索連動型広告との違いや特性を分析
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2011/07/05/10591

【2010年】
アドワーズ広告の「拡張CPC」は、グーグル公式の慎重で柔軟な自動入札の仕組みだ
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2010/11/24/9255

サーチとディスプレイ広告の新たな関係から見える課題--「SES San Francisco 2010」レポート
http://japan.cnet.com/news/commentary/20419585/

上司にアドワーズの予算アップを認めさせる数字作り - エクセルでできる自動入札ツール同様の予算最適化
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2010/07/02/8287

ソーシャルメディアと連携する検索エンジンマーケティングの3つの視点「SMX Advanced Seattle 2010」報告
http://business.nikkeibp.co.jp/article/nmg/20100621/215073/?ST=nmg_page

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参考になりましたでしょうか?ここまで書いておいて何ですが、私自身は今年は他のカンファレンスに参加するかもしれませんが、弊社の他のメンバーは参加すると思います。ご興味が少しでもある方は絶対に参加することをおススメします。ぜひご一緒いただければ幸いです!